5日目:Jauffreと王の隠し子


Weynon Prioryへ向けて足を進める。途中2度ほど野盗の襲撃に遭ったが、皮作りの防具に原始的な鉄製の武器を持った戦士程度なら、もはや装備も整って戦いにも慣れてきた私の敵ではない。




特に困ったトラブルも無く、午前中のうちにCorralの修道院Weynon Prioryへと到着した。早くJauffreに会って、皇帝から預かったアミュレットを渡すとしよう。




Jauffreは皇帝親衛隊Bladesのグランドマスターであると、あの生き残りの兵士は言っていた。私には既に引退したご隠居のようにも見えるが、何やら威厳を感じるのは確かだ。



「何か用かね?」
街の神父が旅人を歓迎するような微笑みで、Jauffreは応対した。私は皇帝のアミュレットを持ってきたことを伝えた。
「そんなはずは無い。あのアミュレットは皇帝以外が身に付けることはできない。アミュレットを持っているのかね?」
Jauffreの表情から微笑みが消え、戸惑いと何か暗い気持ちが現れた。懐から皇帝のアミュレットを差し出すと、Jauffreは今度は驚愕の表情をあらわにした。
「Nineの神よ(なんて事だ)!!これはまさしくAmulet of kings!!君は一体何者だ?どこでこれを?皇帝の暗殺について何か知っているのか?」
私は昨夜刑務所で起きた事を覚えている限り話した。皇帝の子供たちが襲撃された事、一緒に暗殺者たちから逃げながら戦った事、皇帝が最後に私に話した事などを。




私が話し終えると、Jauffreは今まで疑問だった点を話してくれた。長かったので、要約するとこうだ。
「『破壊の王子』というのはOblivionの次元の領主の1人、Mehrunes Dagonの事だ。『Oblivionの顎を閉じよ』という言葉は、おそらく魔界であるOblivionからの脅威を皇帝が感じ取ったのだろう。運命が何故君を選び、皇帝陛下の夢に出てくるようになったのかはわからない。敵がどのように我々の世界を脅かしてくるかだが、それもわからない」
疑問の半分はうやむやにされてしまったが、託されたアミュレットについては気になる事を話してくれた。
「Amulet of Kingsは戴冠の儀において使用されるものだ。Imperial Cityの寺院Temple of the oneのDragonfireに、皇帝の後継者はアミュレットを用いて灯をともすのだ。そうする事によって、Dragonfireはあらゆる邪悪から国を守ってきたのだ」
皇帝が最後に襲われる直前に、竜の血がどうのを言っていたのを思い出す。もしその話が本当ならば、魔界Oblivionに住む『破壊の王子』は私たちの次元に攻め込むために、皇帝の一族を襲撃したのだ。
そして皇帝が亡くなった今、古いDragonfireは新しい後継者が現れるまで機能しないことになる。新しくDragonfireをともさないためには、Amulet of kingsを葬るか、竜の血を根絶やしに――。
そういえば、皇帝の『最後の息子』は?
「私は『彼』の存在を知る数少ない1人だ――」
なんと皇帝には隠し子がいたらしい。その最後の息子は出生を知らされずに安全な場所で暮らしているらしい。今はKvatchで僧侶をやっているとの事だ。
名はMartin。
「すぐにKvatchへ出向いて、Martinをここへ連れてきてくれ。敵が皇帝陛下の最後の後継者の存在に気づく前に、彼を安全にここへ連れてくるのだ」



あの刑務所で徹底的に皇帝と親衛隊を追い回した連中だ。まだ隠し子がいるとわかったら、何をしでかすかわからない。そうなる前に、そのMartinを安全な場所に――。




ってちょっと待て。私が行くのか?皇帝とは昨夜知り合ったばかりだというのに?そもそも私はこの国の人間ではないのに?こら本を読んでるんじゃない。




「さぁ、遠慮せずに必要な物を言ってくれ。私が持つ物資には限りがあるが、できるだけの事はしよう」
Jauffreは宝箱の鍵を開けると、再び机に戻って本を読み始めた。どうやらこのご隠居は、私が全面的に皇帝のために協力すると考えているようだ。
宝箱を覗いてみると、鉄製の鎧一式に治療用のポーションがいくつか。こんな餌でこの私が釣られるとでも思っているのか。



とはいえ、襲われるとわかっている人間を放っておくわけにもいかない。ましてやそのMartinは次期皇帝候補だ。もしかしたら後々見返りが期待できるかもしれない。




Weynon Prioryを後にし、私はMartinのいるKvatchへと向かった。Kvatchの訪問はこれで2度目だ。封鎖が解除されていればいいのだが…。