10日目:Bladeとの再会



翌朝。日が昇りきる前に目覚めた私は鎧に着替え、携帯食料のりんごをかじって外へ出た。




中庭に出ると、地平線に赤みが射してきているのが見えた。さすがは雪山。この凍えるような寒さも雪山ならではだ。
Bladeの騎士たちは交代制で休む間もなく見回りを続けていたが、その様子はまだ穏やかなようにも見える。




ふと、城壁の見晴台の側に絵がかかっているのが見えた。誰かが趣味で描いたのだろうか。
…というか誰だこれ。描かれている絵は室内のようだし、外で描くなら風景画を描けばいいのに。
Cloud Rular Templeには謎が多い…。




まぁそんな連中ともおさらばだ。Jauffreからもらったカタナは武器棚に返してやったし、Martinを助けてやる義理はもう無い。今度こそさよならだ。
再び旅人へと戻る事にしよう。




それからの私は、Imperial Cityを根城にしながら周辺の盗賊やGoblinの巣を狩り続ける日々を送った。
初日はGoblinの住む砦への襲撃だ。リーダー格らしい重戦士Goblinには苦戦したものの、砦の最上階までおびきよせて吹き抜けの穴から突き落としてやった。自然法則の力は偉大だ、ククク…。




2日目。街道を歩いていたら狼に襲われたので、適当にあしらっていたら野盗に襲われた。それも4人組にだ。
「うちの犬っころに何しやがる!!」
さすがに4対1はきつかったものの、逃げながら応戦しているうちにどうにか全員倒す事ができた。敵が最後の1人になった時はこちらが追い掛け回したくらいだ。おかげで装備がボロボロになって早いうちに街に戻らざるを得なくなってしまったが、野盗たちが金目のアイテムをいくつか持っていたのが救いだ。


余った時間は魔法の練習に割く事にした。魔法大学でオリジナルの魔法を作れるようになったのはいいが、私自身の魔法の限界が狭くては宝の持ち腐れもいいところだ。




3日目。初日と2日目で稼いだ金を使って、魔法大学で新しい魔法を作ってみる事にした。前回の『Regeneration』の魔法で回復力は強化したので、今度は攻撃力だ。3日ほど前は私の実力が足りず大した魔法は作れなかったが、あれから修羅場や練習を積み重ねたおかげで少しは高等な魔法が扱えるようになっている。
今回私が作ったのは接近戦用の攻撃魔法だ。
○Blow of 〜Lv1 :(接触した相手に13点×3秒間のダメージ)
私の戦術は剣による近接戦闘が中心だ。だからもてあましがちな魔力を必殺の攻撃に換えれば、さらに強い敵とも戦えるようになるはずだ。『Blow of 〜Lv1』の魔法は炎、氷、雷のそれぞれ3種類の属性を作っておいた。わかりやすくするために『炎の拳Lv1』とでも呼ぼうか。




小腹が空いてきたので、早い昼食を摂ろうとElven Garden地区の酒場へ入った。宿屋も兼ねているので営業はしているが、昼間のため客はほとんどいなかった。カウンターでちびちびと飲んでいる男が1人、奥のベンチで本を読んでいる男が1人いるだけだった。




私はカウンター席に座り、主人にカットチーズとトウモロコシの盛り合わせとはちみつ酒を注文した。
主人が調理を始めて間もなく、隣でちびちび飲んでいた男が小さな声で話しかけてきた。
「いいか、少ししたら私はここから出る。後ろの男が私を尾けるはずだ。君は彼を尾行するんだ」
ちょうどトウモロコシの甘い味を想像していたところだったので、一瞬何を言われたのかわからなかった。隣の男の顔を見ると、酒を飲んでいるようには見えない真剣な目つきをしていた。どこかで見た顔だった。
新手のナンパか?私が喋ろうとすると、彼は首を振って制した。
「我々は今話すことはできない。私の先導に付いてくるのだ」




そういって彼は席を立ち、酒場の奥の扉へと消えてしまった。
なんて強引な奴だ。しかしどこかで見たような…?




!!




あの刑務所でのBladeの生き残りか!…いや待てよ、そういえばJauffreがどこぞの下宿小屋でBladeの仲間と合流しろと言っていたような…。あの時は半分聞いていなかったが、ひょっとしたらここの事だったのだろうか…。




そんな事を考えていると、さっきまでじっと本を読んでいた男が急に立ち上がり、先の彼が入っていった奥の扉へと向かっていった。…明らかに尾けている姿勢だ。




昼食を邪魔されたせいで気がすすまないが、すぐそこで殺し合いが始まる中で昼食を食べるわけにもいかない。
私も立ち上がり、彼らの後を追った。




扉の先は酒場の貯蔵庫のようだった。金属同士が激しくぶつかり合う音が聞こえてきた。駆けつけると、あの赤い暗殺者とBladeが既に戦いを始めていた。私は剣を抜き、Blade側に参戦した。




奇襲しか能の無い暗殺者を始末すると、刑務所でのBladeの生き残り―Baurus―は私との再会を喜ぶ…前に死体を指差した。
「そいつの持ち物を調べてくれ。私はこいつの仲間がいないか、周囲を見張っている」
人使いの荒さに苛立ちながらも、私は暗殺者の死体を探った。検めるもなにも、この連中は魔法で武器どころか全身鎧も調達するのだから身分を表すようなものなど持っていないと思うのだが…。
男が持っていたのは僅かな金貨、それとさっきまで読んでいた本くらいだった。題名は『Mystic Dawn Commentaries』。パラパラとページをめくってみると、どうやらどこぞの宗教の教本のようだった。Baurusは私がこの本を読む様子をじっと見ていた。…彼はこいつの―赤の暗殺者集団―の正体について何か知っているようだ。
「よくやった。君に会えてよかったよ。タイミングの悪い時に出会ってしまったがね」
Baurusは続ける。
「皇帝を暗殺した連中はDeedraを崇拝するカルト集団、Mystic Dawnと呼ばれる連中だ。Mehrunes Dagonを崇拝している。Imperial Cityに潜伏している諜報員を私は追っていたのだが、どうやら気づかれていたようだ」
私は皇帝側の状況を説明した。Martinたちと別れてから3日も経つので既に情報が入ってきてるかと思ったが、そうでもなかったようだ。
「アミュレットはjauffreの元から奪われたのか…。事態は私が思った以上に深刻なようだな。だが皇帝の後継者が生きているとは…!Talosよ、彼が生きている事に感謝いたします!」
BaurusはMartin Septimを必ず皇帝の座に就かせて見せるぞ、といきこんでいた。無関係でいたい私はこれからどうしようか、と本をもてあそんでいると、Baurusがその本を指して言った。
「魔法大学にTar-meenaという学者がいる。Deedra崇拝の専門だ。彼女にそれを見せて、どう判断するか確かめてみないか」
正直、自分で持っていってくれと思ったが、彼には守れと言われた皇帝を守りきれなかったという負い目がある。私はうなずいた。




BaurusはMystic Dawnの情報網を探るために街へ戻っていった。