2日目:旅立ち




翌朝、宿を出ると馬小屋に2人ほど誰かがたむろっていた。1人はArielle、もう1人は仲間のバトルメイジだろうか。彼女らは私の援護として隠れて追跡してくるのだろう。言われた通り、私は彼女らの存在は無視して街道を東に歩き始めた。
…って、走ってついてくるんじゃない。どう見ても怪しいぞアンタたち。




しかしそう思ったのも束の間、バトルメイジたちはいつの間にか姿を消していた。
街道を進むにつれ、少し緊張してくる。不意打ちをくらわないよう、辺りを警戒して足を進める。




ふと、草葉の陰から何者かが飛び出してきた。素早く身構えたが、やってきたのは昨夜商人と詐称した私を心配してくれたあの中年女性だった。
「残念だけど、あなたの旅はおしまいよ旅人さん」
中年女性は昨夜の鮮やかな青いドレスを着たままだった。戦闘向きの装備は無い。盗賊と呼ぶにはあまりに違和感のある格好だった。
「あなたの持ち物を全て奪うわ。あなたを殺した後でね。この間のより沢山持っているといいけど。あれにはがっかりさせられたわ」
言いたいことだけ言うと、この不良魔術師は呪文を詠唱した。




私はCarahil支部長から貰った氷魔法防御のスクロールを読み上げ、攻撃魔法に備える。
剣を抜いて応戦しようとしたが、彼女の唱えた魔法は攻撃ではなかったようだ。剣を抜ききる前に、突然現れたスケルトンの斧に背中を斬りつけられた。
魔術師は今度こそ氷の魔法を飛ばしてきた。必死でかわし、スケルトンの次の攻撃に備えて剣を構える。視界に、さっきまで隠れていたバトルメイジたちが現れて不良魔術師に突撃する姿が見えた。




その後はあっという間だった。さすがは戦闘用の魔術師たち。ごろつき魔術師程度の魔法にはビクともせずに、攻撃魔法を遠距離から叩き込み、近づいて斧でとどめを刺した。



「よくやったわね。あなたはCarahilの元へ戻って、任務の成功を伝えるといいわ」
Arielleたちバトルメイジは、そのままあっさりと引き上げていった。予想はしていたが、この強盗の死体は放置のようだ。私は魔術師の死体からポーションや金品を奪い、Anvilへ戻った。



魔術師ギルドへ戻って支部長に報告すると、推薦状を書くことを約束してくれた。金品の報酬は特に無いようだ。




しかしこれまでの稼ぎで、必要最低限の金銭は手に入ったように思える。私の本業は旅をすることだ。一箇所に留まって生活するつもりは無い。
戦士ギルドで稼いだ報酬を元に、私は装備を整えた。保存食料や水袋を買い込み、鍛冶屋で皮製の盾を購入した。




ついでに、戦士ギルドのオフィスで鋼鉄製のグリーブとブーツを発見した。不恰好な組み合わせになるが、拝借するとしよう。




ようやく新大陸旅行の開始だ。目的地は帝都Inperial Cityだ。そこへ行くには、まずKvatch、Skingradの街を通過するのがいいだろう。